空と風のうたブログ
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鎌倉恋愛物語
2005年08月09日 (火) 12:33 | Edit
[書籍概要]
タイトル:鎌倉恋愛物語
著者:麻生雪奈
イラスト:祭河ななを
出版社:オークラ出版(アクア文庫)
発売日:2004/11/18
収録タイトル:「鎌倉恋愛物語」 「花-flower-」

[あらすじ]
鳴海千紘と陸郎は同じ高校に通っている、一つ違いの実の兄弟。自分とは正反対で、人なつっこい性格の千紘だけを見つめ、幼い頃から恋心を秘め続けてきた弟の陸郎。しかしある日、千紘の前に三枝瞭人という青年が現れて、ふたりのバランスは大きく変化してゆく。「傷つけたく、なかったんだ」泣きながら千紘にキスをする陸郎の想いは果たして……。

[感想]
タイトル通り、鎌倉を舞台にしたお話。主人公達は鎌倉に暮らしていながらも、その鎌倉に対する望郷の思いを抱き続けているような、そんな印象。ストーリーに関しては、本を読んでいるというよりは、映像を見ているという感覚だったように思います。文章を理解するんじゃなく、情景をありのまま受け止める感じ。何だか不思議な思いでした。あと、主に千紘の視点なんだけれど、時々、陸郎や三枝の感じていることなどが間に入ってきたりするので、ちょっと戸惑ったりしました。
主人公の千紘と陸郎は実の兄弟です。陸郎は、幼い頃から千紘だけを見つめ続け、千紘以外はどうでも良いと思っている。それが陸郎にとって当たり前のことで、けれど、その想いは叶うはずもなくて、かといって諦めることもできない。長年の陸郎のその想いの深さを、それに伴う苦しみを、推し量ることはとてもできなかったです。彼ら以外の誰も、介入できることじゃないだろうから。ただ、実の兄弟だという「血」を、重いものだと捉えるけれど、同時にそれは彼らが唯一縋れるものだとも捉えられるような気がします。
それから、重要な人物・三枝。さっき、彼ら以外の誰も介入できないと書きましたが、三枝は違う気がします。千紘と陸郎の間に流れる「血」は誰にも解読できないかもしれないけれど、三枝は確かに二人の間に変化をもたらした。でも、三枝は優しすぎるというか……どんな手段を使っても千紘が欲しいと言いながらも、その言動はどこまでも優しく、千紘を見る様は透き通っていて(それはこのお話全体の印象でもあるんですけど)、見ていてやるせない気持ちになりました。三枝も言ったように、三枝を選べば千紘も陸郎も楽になれるし、傷つかずにすむ。けれど、千紘が選んだのは陸郎だけ。三枝はそれを解っていて、それでも先の言葉を言ったんじゃないかと思う。千紘を手に入れるためじゃなく、千紘をすくいあげるために。……私は、そんな三枝が一番好きだったんですけどね。
ラストは、ハッピーエンドとは言い難いですね。確かに千紘と陸郎の想いは通じ合ったけれど、それで終わりじゃない。これから先、色々なことがあるだろうし、苦しみも痛みも今まで以上に感じるだろうと思う。でも、千紘も陸郎も怖いという気持ちを抱えていて、それでもお互いを愛しているという想いを抱えて、二人で立ち向かっていくことができる。実の兄弟じゃなくても未来は遠いけれど、実の兄弟だからこそ遠い未来を、彼らが彼らなりの形で掴んでくれると良いなと思いました。

個人的評価:★★★★

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