空と風のうたブログ
読書記録(BL&非BL)、ゲームの感想など。
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【紫影のソナーニル】(5)
2010年12月11日 (土) 23:58 | Edit
【紫影のソナーニル-What a beautiful memories-】、今日は、「第4章 そして、猫はか細く鳴いた」・「第4の絵本」・「間章 触れる手と手」です。
ようやく、マンハッタン……の南端、入口に到着しました。目指す果ては北端にあるので、まだ目的地まではたどりつけませんね。でも、何となく旅の終わりが見えてきてちょっと寂しい。
今章は、猫です。リリィが猫になりました。じゃなくて猫のふりをすることになりました。地下鉄を降りる前は嫌な予感を覚えたのですが、いざ降りたら猫。その後も、猫テストとか……。
……でも、そんなふうなのも、前半だけだった。
そうだろうと思っていたけど、駄目だった。
涙が止まらなかった。十分泣いたのに、最後の最後でまた泣いた……。

詳細はたたみます。今までも十分ネタバレでしたが、今回は本当にネタバレです。今まで以上に読み難いかもしれません。すみません。


▼第4章 そして、猫はか細く鳴いた
やっぱり、地下世界の住人は5年前に死んでしまっていたんですね。今まで会った人たちも……。薄々解っていたことだけど、前章で多分そうだろうと思ったけど……実際にそうだと突き付けられると、やりきれないです。

冒頭、地下鉄内のリリィとAのやりとり。どうやらリリィ、着替えも入浴も慣れたらしいです。そうか、慣れたのか……。慣れてしまったことに落ち込んではいますが、そうか、慣れたのか……。ずっと立ったままリリィを見ていたのに、食事中は座るようになったりとか、Aにも些細な変化があるようだし、前章でのリリィの決意とかそういうのも関係してるのかな? 食事といえば、デザートもちゃんと用意してくれるんですね。ケーキとかタルトとか。食材とかどうしてるのかという質問には答えてくれないけどね。
前章と同じようにまた地下鉄が停車しました。でも、今回は急停車ではありません。停まる必要があるから停まっただけ。外を覗いてみると、壁が行く手を塞いでいました。ここがマンハッタンの入口・ウォール街です。でも、目指す果ては北端、南部のここからはまだ遠いです。しかも道は、巨大な壁……ザ・ウォールによって阻まれている。
「ここから果てまでは、また旅だ。それでも、まだ、きみは進むかい? ウォール街の猫たちと、彼女らのあるじとの交渉が必要だ。壁を開くには。きみは、どうする。壁の街の彼らに会うのかい」
Aが普段と違う様子なので、何か嫌な予感がしてきます。果てに行くためにはここを通らないといけなくて、そのために交渉が必要なら会いに行く。それなのに、そう言ったリリィに、「……ああ」とだけ。この間は何? ますます嫌な予感。
リリィが聞いた、ぽろぽろと、何かが零れ落ちるような音……この章ではこの表現が何回も出てきます。

地上。エリシアもウォール街に着き、行く手を阻む壁を目にしていた。この壁を通り抜けないことには、目的地……マンハッタンの北端、トレヴァー・タワーには辿り着けない。
5年前までウォール街は、合衆国の中枢で心臓で、エリートの街だと言われていて、アランと歩くことを想像したこともあった。けれど今それを思い出すと、この5年間封じ込めてきた「悲しみ」を思い出してしまう。5年間、忘れてしまうことで考えないようにしてきたことを……。

地下。リリィは、ウォール・ストリートをひとり歩いています。Aは地下鉄で待機中。この街には、猫が人に転じたと言われるネコビトと、彼女らのあるじでただひとりの人間であるルース=Bがいます。ネコビトは人間が嫌いなので(ルース=Bだけは例外)、リリィは猫のふりをしてひとりで街に行くことになったわけです。あ、これまで何度も出てきたマオもネコビトです。そしてネコビトは鉄にならないそうです。……話を戻して。猫のふりをしているので、リリィは猫耳としっぽをつけています。が……つけたのはAって。耳はともかくしっぽは……。リリィは開き直って、Aも気にしてないんだから自分も気にしない、気にするだけ損だと言い聞かせてますが。いや、気にするよ。だってしっぽだよ。……でも、Aが傍にいないのは初めてだし、完全に別行動だからAの出番ほとんどないし、ちょっと残念(……とか思っていたのも、中盤以降の展開で吹っ飛んだけど)。

そんな時、西の魔女の配下である黒い巨人たちがやってきて、リリィは見つかって捕らえられそうになりますが、危ないところをリリィと同じ年頃の男の子に助けられました。ホームランを打つかの如く、黒い巨人たちの頭部をバットで吹っ飛ばして。それが、ネコビト達のあるじ、ルース=Bでした。ルースは、リリィを新入りの猫として、城に案内してくれることに。そこなら黒い巨人たちも入れないからと。戸惑いつつついて行くと、ネコビトたちが大勢ルースを取り囲んで大騒ぎ。その中にはマオもいます。そこへルシャというネコビトが、新入りなんて怪しい、と言って猫テストを受けさせられることに。猫たちのお城の一室に連れて行かれて、猫鳴き声、猫歩き、猫顔洗い、猫ダンスに猫歌……極めつけは猫服検査。ネコビトは下着をつけないから、リリィがネコビトなら下着つけてないはずってことらしい。そこからまた大騒ぎ。ルースが止めてくれて助かったけど。で、猫だろうがなんだろうが歓迎するけど、壁を開けようとは思うな、と言われてしまいます。壁の向こうには怪物がいるから壁を閉ざしているんだと。
ルースは、眩しいほどの笑顔で、大リーグでホームランを打つのが夢だと語る。それは地下世界でリリィが初めて聞く、先のこと、明日のこと、夢だった。そんなルースが羨ましいリリィ。自分にはない、自分にはまだそんな笑顔はできないから。けれど……不意にルースの笑顔が消えて。セントラルパークの西の魔女がルースたちを苦しめていると。いつか怪物が消えたら壁を開いて魔女をやっつけて、そうすれば地上に戻れる。戻って、誰よりも多くホームランをかっ飛ばすのだと。

地上。エリシアが、通り抜けられるところがないか探していると、壁の片隅の落書きを見つける。ホームランがどうとか、壁さえ越える選手になるとか。地上にいた頃のルースの落書きかな? それを見て、またアランを思い出すエリシア。壁に落書きをするアランを。そんな時、不意に猫が……猫の鳴き声が。生き物などいるはずのないこの場所に猫が何匹も。そして猫は駆けて行ってしまう。時々エリシアを振り返りながら。それが、何かを訴えているように見えて、エリシアは猫を追いかける(ここで選択肢が出て、追いかけないとそこでゲーム終了)。ぽろぽろと何かが零れ落ちる音を聞きながら……。

地下。夜。元気そうに見えたルースは、実は膝から下が鉄で、体の中は全部鉄になっていました。こうしていると自分はまだ人間みたいな気がするからと、ルースは動かない足でルシャを抱く。あんなにバットを振り回して普通に歩いていた(ように見えた)のに……見た目だけでは判断できないですね。3章のユリアナもそうだったし。
ルシャの最中の声が聞こえてきて、聞かない方が良いような気がして、お城を抜け出すリリィ。そこへマオが来て、詩篇を教えてくれる。「悲しい」が込められた詩篇。ルースが大事で、でも誰にも助けられない、だから一度は逃げた、でも……と。そこへルシャが来て、話があると連れ出される。猫広場とか餌場とか色々案内してくれるルシャに、認めてくれたのだと嬉しい気持ちと、騙しているという後ろめたい気持ちとを感じつつ、ネコビトたちがみんなルースが大好きなのが、誰かが誰かを好きなことが嬉しく感じられるリリィ。
ルシャはルースに恋している……ルシャが言う「恋」という言葉に、それが何なのか解らないのに、リリィは胸がぎゅうっと掴まれたような気分になる。
ルースや恋のことを語るルシャは明るい笑顔だったけど、不意に表情が変わって悲しげになります。そして、壁さえ開けばルースは地上に戻れるのに、と。さっきもルースがそんなようなこと言ってましたね。リリィが、どうしてそう思うのか、そんな話は聞いたことがないと言ったら、ルシャの答えは……。
「あはは。そんなの、決まってるよ。わかんない、かな? そう思わないと、さ。死んじゃいそうだからだよ。そういう風に、嘘でも思っておかないと。……悲しくって、さ」

ルースの部屋。鉄になっていく自分を、歯がゆく思うルース。ルースがホームランにこだわるのは……動いてくれない足でも、誰より早く塁に出られなくても、ホームランさえ打てればどうにでもなるから、というのも理由の一つなんだね。そんな自分を鼓舞して、リリィを壁の向こうに行かせてやろう、西の魔女も御使いも怖くない、壁の向こうの怪物なんて本当は……と壁を開けてやろうと決めます。ルースはリリィの望みも、全部解っていたんですね。でも、そこへ、チクタクマンの従者のひとりが現れる。現実を思い出したルースに、現実を忘れさせようと……。

再び、リリィとルシャ。ルースが大好きだと何度も語るルシャに、リリィはAのことを思い出す。ここにはいないAはずっと地下鉄にいるのかなと気にしたり。そろそろ城に帰ろうって言葉に、地下鉄のことを浮かべたり。猫の城も居心地が良いけど、自分の帰る場所は地下鉄だって思います。
そこへ、ネコビト達を引き連れたルースがやって来る。明らかに様子がおかしいです。それが解っていたのに、ここに来た目的を聞かれ、本当のことを答えてしまう。怪物のことは気になるけど、Aは何も言わなかったから障害じゃないんだと思って。このあたりのシーンは、リリィがAを信頼してるのが解って良いですね。そしたら突然、拘束しろとルースが命じる。拘束され、首輪をつけられるリリィ。この首輪は、エジソンの輪といって、《機姉妹》(チクタクマンの従者)から貰ったらしい。現象数式(クラッキングエフェクト)を阻む効果があるとか。「壁を開いたら、俺は怪物に食い殺される。リリィは西の魔女に引き渡す」といよいよおかしいルースに不安が膨れ上がり、リリィはAを呼ぶけど、首輪が阻んでるいるのか、いくら呼んでも来てくれない。ルシャ達が悲しい目で必死にルースを正気づかせようとする。正気と狂気の間をルースが行ったり来たりしているのを見て、マオも笑いながら泣いている。
その後、なんとか自力で正気に戻ったルース。でも、黒い影をもつ白きもの……御使いが来てしまう。周囲をその影で枯らせながら。リリィはAを呼ぼうとするけど、やっぱり首輪が阻んでいるのか、Aは来てくれない。外してもらおうにもルースに意識が向いて誰もこっちを見ない。猫たちが逃げてと叫ぶ中、ルースは、これが地下世界の法則、理だから逃げられないと。でも、こんなところでモールになんかならねぇと、自分から広場から飛び降りてしまう。最初から最後まで御使いにやられるくらいなら、最期までメモリーを削り取られるくらいならと。そして……ルースが……ウォール街の地面へ叩きつけられて。それを見届けた御使いは消えたけど、ルースは。リリィは初めて人間の死を目の当たりにする。血を流して、虚ろな目をして動かないルースに震えながら呼びかけるリリィ。このCGは正直きつい。特に目が。マオは、「リリィ。あんたは何も知らないんだ。もう、死んでるんだよ。ルースは」と告げる。リリィには解らなかったけど、この言葉にはもう嫌な予感がするどころじゃなかった。ルースの今の状態のことを言ってるんじゃない、って解ったから。しばらくして、混乱しまともな言葉も出ないリリィの耳に、鉄の軋む音が聞こえ、ルースの目の焦点が合って体が元に戻っていく。一部を……膝上までを鉄に変えながら、それでも戻っていく。

「知らないのか? 地下世界で、人間は死なない。御使いに襲われて殺されても鉄になるだけだ。それがルフランだ。お前だって知ってるだろ? ただ鉄になるだけじゃないんだぜ。お前にゃわからないんだな。なんで、俺らがこうなっちまうのか。なんで、死なないのか。なんで、鉄になるのか。それはさ……。俺たち、実はもう、とっくの昔に死んでるんだよ。死んでるんだよ。わかんないか、リリィ。とっくに死んでるだけなんだよ。命が、ないんだ。だから、死なない。ほら、見ろよ。鉄になるだけ。みんなそうだ。みんな、みんな、みんなそうだ。外区もマンハッタンも、同じ。生きてる人間は、誰も、地下世界にはいないんだ。生きてるのは猫だけだ。あとは、そうだ……。なあ、リリィ……。ただひとりのストレンジャー。死んで、ないのは……。……お前、くらいのもんだよ」

……ああ、へこんだ。予想していても、こうもきっぱり突き付けられると、どうしようもない気持ちになります。

地上。猫に導かれて、エリシアが辿り着いた先には……黄金瞳の左目で見た亀裂の先には……これまで旅してきた中で初めて見る、いないとされていたはずの、人間の死体がありました。細くて、真っ黒で、細い枯れ枝のような姿で、みんな消えてしまったのに、ただひとりだけ、ここにいる。エリシアには誰なのか解らなかったけど……ルースですよね。涙を流してルースを抱き締めるエリシア。猫たちも、ルースに寄り添ってか細く鳴く。今までずっと考えないようにしてきたけど認めまいとしてきたけど、ルースを見つけたことで解ってしまった。エリシアの大切なアランも、5年前に、ここのどこかで、命を落としたのだと。
ついさっきの地下での出来事とこの地上での出来事と。もう駄目でした。泣いた。地上にいた人たち、地下世界で会った人たち、これから会うだろう人たちを思うと、止まりませんでした。

朝。猫の城の一室。拘束と首輪を解いてもらったリリィ。影の御使いは、一ヶ月に一度来てルースを襲う。それがウォール街の法則です。その度に、ああやって自分から落ちて死んで、ルフランして、それの繰り返しかと思うともう……。ルフランは知ってたけど、リリィと同様に私も、ああやって目の当たりにしたのは初めてです。今までは、リリィが見ていないところで起こったり、起こる前にリリィとAが御使いを倒してたから。とても……惨い。それに毎月ルースは耐えてるんですよね。地上で死んで、地下に落ちた5年前からずっと。
ルースは、リリィに詩篇を教えてくれます。完全には意味の解らない詩篇。ルースが伝えようとしていることを解りたいのにリリィには解らない。詩篇の内容は……地下世界の住人のメモリーは、誰かに盗まれて、どこにあるのか解らない。壁の向こうに怪物なんていない、セントラルパークの西の魔女へ続く道があるだけ、でもそこにもメモリーはない。それならメモリーはどこにある? 誰がメモリーを弄ってる?……って感じでした(テキスト部分。声は、地上で起きたことを語っている部分もある)。ルースは、リリィは特別なんだと言う。リリィのメモリーはリリィのものだと。だから、忘れないでくれよな、特別なお前はそれができる、お前は魔女になれるんだ、たとえば、世界だっておまえのものだと。言われたことをぐるぐる考えるリリィ。今、Aはいないから、導いてくれる声はないから、自分で考えなければ。解らないことばかりだけど、解るのは、こんな法則があるのは、当たり前があるのは、おかしいってこと。
ルースが壁を開くというので、広場にひとりやって来たリリィ。影の御使いが来た場所。枯れたはずの茸はもう元に戻っていた。鉄になるのは人間だけ、ならないのはリリィと猫。じゃあAはどうなの? とあれこれ考えます。しかし広場には先客がいました。猫たちです。ルースはもう限界だと。今まで諦めず、何度殺されてもモールにならずにいるけど、それももう限界なのだと。壁を開けても西の魔女を怒らせるだけで、一ヶ月経っていなくても御使いが来ると。今度襲われたらルースはモールになってしまう。だからルースに壁を開けさせないでと。猫たちはルースが大好きで、ルースを失いたくなくて、でもリリィが先へ行きたがっていることも解っているから、強制はできない。そんな猫たちの気持ちが痛いです。リリィは、果てへ行く、それがリリィがリリィである理由だから。でも、ルースが傷つくのも嫌、誰にも傷ついて欲しくない、それは3章でも感じたこと。3章では迷って逃げたけど、今回は迷いません。
そして、ルースが来て、壁の前に立つ。
「俺は夢を諦めない。大リーグの選手になってやるんだ。死んでたって、構うもんか。だからお前を行かせてやる、ビビるのはもうやめだ。俺は俺の夢も願いも諦めないし、誰の夢も願いも諦めさせやしない。壁を開く」
ルースの言葉で壁はあっさりと開く。西の魔女に閉ざされた壁が。そして完全に開いた壁の先にいたのは……影の御使い。影の御使いは周囲の茸を黒く枯らせながら、ルースを狙う。それでもルースは、庇うように間に立ったリリィに、御使いが自分を襲っている間に行けという。ルース、強いなぁ。すごく格好良い。でも辛い。けど、勿論、リリィが言う通りにするはずがなく……リリィの求めに応じてようやくAが来ました。ランバージャックはもういないからどうするのかと思ったけど、Aの操るクリッターは3体って用語辞典に書いてあったっけ。2体目のクリッターは鋼鉄の猛獣アントライオン。一撃で、影の御使いは粉砕されました。リリィが薔薇の魔女になって戦うのは今回はなし。そういえば、武器一つに一度きりって言ってたな。ということは、ランバージャックの時みたいに、倒されたクリッターが遺した武器を使って戦うのかな。もしそうだったら、アントライオンも3体目のクリッターも倒されちゃうのか……。
その後のルースの独白が切ないです。本当にやりきれない。これを聞いていたのに、何故、その先の展開が想像できなかったのか……。

……呑み込んだ。
呑み込みやがった。あんなに、体格差があるのに。
でけえ影を小さな影の蜘蛛が噛み砕いた。呑み込んで、ああ、すげえや。
見事なもんだな。あの蜘蛛だか獣だかは、良いバケモンだ。
同じバケモンでも、リリィの……。リリィの手下の兄ちゃんのあいつは、いいバケモンだ。気に入った。
体格差ある相手にも、ってのがいい。俺はほら。まだちっこいからな。
もう成長しない俺の体。この5年、ちっとも背は伸びない。
死んでるんだから当たり前だよな、俺たち、死んでるんだから。地下世界の人間は、みんなそうだ。
時間が止まっちまったみたいに、5年前に死ぬ直前の、この姿のままだ。
で、鉄になるだけ。何をしようと《御使い》が来ておしまい。それが俺たち、地下世界の人間。
死んで、死んで、死んで、とにかく何度も死にまくって、あとはモールになるだけ。
……リリィが来るまでは。それが、俺たち全員の運命だった。
そいつが、はは、見ろよこれ。こんなに見事に食い破りやがって。
ちくしょう。格好いいなあ、リリィ。
リリィの影ン中から出てきた兄ちゃんも、ああ、いいな。背ェ高くて。
俺もあれくらい身長あれば、もう、とっくに大リーグの選手だ。いいな。あれくらいの背。
……ちくしょう。ちくしょう、でかくなりたいな。
成長したい。でも、できないのは知ってるさ。
意地悪な《機姉妹》どものせいで、俺のメモリーは弄られっぱなしで。成長しないことも、忘れてたんだけどさ。
何が怪物だか。はは、ほんと莫迦みたいだ。
怪物はいた。でも、そいつは天使じゃない。あいつだ。あいつが本物だ。
リリィと、隣の兄ちゃんのあいつだ。あの蜘蛛みたいなやつ。あいつこそ、本物の怪物だ。
あいつはいいな。ああ、いいぜ。
よし、そうだ。そうだな。あいつを俺のチームのマスコットにしよう。そうしてやろう。
じゃあ、チーム名はニューヨーク・アントライオンズだ。
へへ。語呂も悪くない。いいじゃんか。
ああ……。本当、ちくしょう。ちくしょう。
見せてやりたかったな。リリィにも。俺の、猫たちにも。
俺が……。
俺がさ、背ェ高くなって、もう満員ぱんぱんのポロ・グラウンズでさ。
ホームラン打つ姿を、さ。あいつらに見せてやりたかったな。
灰色の雲の向こうにまで届く、誰よりでっかい、ホームランをさ。
ああ、くそ。ほっとしたら、力が抜けてきた。
でも、いい。いいや。いいよな。どうせ俺は死んでるんだ。
ああ、悔しいな。どうしてうまくいかないんだ。
疲れて、疲れて。気が抜けて、もう、力入らねえや。
だらしがないよな、本当にさ。俺、大リーグに行かなきゃいけないのに。
ちくしょう――

地上。通り抜けられる場所を見つけたエリシア。悲しみを受け入れ、アランを失った事実を認めて、それでも今は、立ち止まらないと決めて、今回の旅の記録も手帳に書き記す。エリシアがエリシアである証に。ぽろぽろと何か零れ落ちるような音を聞きながら、猫たちの鳴き声を聞きながら。

地下。助けられたと思ったのに、ルース=Bは……モールになっていく。耐え続けてきた幾度もの死に、擦り切れてしまって。耐えて、堪えることをやめて。何かひとつを諦めた。でもそれは、ルース自身が望んだこと。最期の言葉、微笑み。自分は幸せだったよな、猫たちがいた、ひとりじゃなかったって……。リリィとAと猫たちが見守るなか、ルースは……そして、猫たちがか細く鳴いた(タイトル)。

それまでも十分泣いたけど、最後の最後で、ルースの最期にまた泣きました。野球のことを語るルースの表情も、バットを振る姿も、猫たちと騒ぐ姿も、御使いを前にしても誇らしく立っていた姿も、何もかも、何もかも、忘れられない。確かに今助かったとしてももう成長しないのは変えられないけど、猫たちみんなに愛されていたけど、ひとりじゃなかったかもしれないけど、こんなのって……。助かって欲しかったのに。一度は助けられたと思ったからこそ余計に。……同時に、腹が立ちました。

「夢だと? 明日だと? 下らん。そんなもの、終わってしまえば、何の意味もない」
「すべて。そう、すべて。あらゆるものは意味を持たない。たとえば――終わってしまえば、何の意味もない」

今まで何度も出てきた、ジャガーマンとチクタクマンの「何の意味もない」という言葉。章によって内容は違いますが、今章では、ルースのことを言ってるわけです。チクタクマンが、地下世界の住人の命……メモリー(記憶)を弄んでるんですよね? 目的はまだ良く解らないけど、でも、チクタクマンがそうしてるんだよね? 終わる原因作った張本人が言うな……。ああ、ますます腹が立ってきた。

あと、途中に出てきたAとルチアーノの会話。Aもルチアーノも、今回解った地下世界の真実以上のものを確実に知ってるよね。話からすると、ルチアーノが既に死んでいるのは確かなようだけど、ルースと同じようにルフランしても記憶を保っているらしいし(ルースが記憶を保っているのは地上に体が残っているかららしい)。Aのことにも言及して、Aは自分たちとも違う、猫とも違う、リリィとも違うって。作られた存在であるとか、現象数式を阻むエジソンの輪のせいでリリィの元に来れなかったこととか、色々なことが気になってしょうがないんですが。


▼第4の絵本
今回のヒントは、ルースとマオの語った詩篇。内容は、ルースの……。


▼間章 触れる手と手
エリシアとアランの過去話その4。予定より早くアランがハイスクールを去ることになって落ち込むエリシア。エジソン財団の研究所から、エジソン卿の研究の手伝いをして欲しいからニューヨークに戻るよう通達されたらしい。果てしなくぼんやりし、落ち込み、何も手につかないエリシアを心配したヴィヴィが発破をかけ、エリシアはこのまま別れてもう二度と会えなくなるのは嫌だと勇気を振り絞ることに。アランを前にパニックになりながらもこれだけは言わないと、とアランの手をぎゅっと握るエリシア。……これを握手だと思うアランってすごいな……(褒めてません)。そして、エリシアの口から出た言葉は、「ぶ……文通、なんて、いかかですかっ」。……文通? いや、てっきり告白するのかと思ってたので一瞬固まりました。で、結果は……文通は断られてしまいました。おかげでエリシア倒れちゃうし……。でも、アランの答えには実は続きがあって、声を聞ける方が嬉しいからと、電信通信の試作品で連絡を取り合うことになりました。一度突き落としておいて最後に持ち上げるんですね、アランさん。いや、わざとそうしてるわけじゃないのは解ってますけど。


次は「第5章 オン・ザ・ブロードウェイ」です。次の街に行くまでの間のリリィとAのやりとりで、こんなに不安な気分になったのは初めてだ……。いや、4章では嫌な予感を覚えたけど、5章は更に……。

あ、そういえば、開いていなかった3ページ目1枚目のCGは4章で開きました。
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