空と風のうたブログ
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【紫影のソナーニル】(8)
2010年12月14日 (火) 23:20 | Edit
【紫影のソナーニル-What a beautiful memories-】、クリアしました。

スチームパンクシリーズは今までずっと体験版で挫折していたので、今作がシリーズ初プレイでしたが、前作未プレイでも問題はなかったと思いますね。黄金瞳とか現象数式とか前作やってた方が理解しやすいのかなとは思うけど……用語辞典だけでも十分いけたので。

……ということで、今日は、「最終章 MEMORY」です。
最後までやっても、やっぱり、一番好きなキャラはAです。一途で揺らがなくて強くて格好良くて。ちょっとあれなところも、全部ひっくるめて大好きです。リリィとのやりとりも楽しかった。
特に好きな章は、4章と最終章。泣いたのもそう。

今回は、Aの正体とか、結末とか、ネタバレしまくりです。そして長いです。
あと、18禁なシーンについても書いてます。


▼最終章 MEMORY
冒頭は、1902年12月24日、トレヴァー・タワー最上階のエジソン卿の部屋での、アランとエジソン卿の会話から。
現象数式……あらゆる物理現象を数式の演算のみで歪め得る……膨大なある種の数式を走らせることで物理への介入を行うという、神なる力。それを、エジソン卿は有していた。そして、この部屋が神なる力を操る源です。ここで、実験が行われようとしている。精神が物理を凌駕し得るという可能性、可能性が現実を凌駕し得るという実験。エジソン卿は、アランに目をかけていて、そんなアランに問う。「きみはこの実験に何を望む?」と。アランの答えは「青空」でした。いつか青空を見せてあげると約束した人がいるのだと。そういえば、初デートの時、エリシアの瞳が青空みたいだ云々って話をしていた時、エリシアにいつか青空を見せてあげると言っていたっけ。そのために、アランはエジソン卿に協力したんですね。「愛をかたちにしたいのか。そうだね?」と訊くエジソン卿に、アランは、「はい。僕の心よりの願いです」と答える。それに手を貸そうと言うエジソン卿。でも、エジソン卿は人間の言う愛などに意味はないと思っています。「ただし、愛なるものが夢や幻ではなく、ほんとうに、存在すればの話だが」と。
そして、12月25日。発見された記録音声より。エリシアに何か伝えようとするアランの声が……。

現在。地上。灰色の空の下・廃墟のニューヨークを歩くエリシアは、紫色の空の下・地下世界を歩くリリィを感じて、現実と幻とが渦巻いてわけが解らなくなって、混乱しています。記憶が、精神が揺らぐ。忘れてしまえば、幻など影などに惑わされはしない。在り得ないはずのことが起きた場所なら、ありえないことも起こり得る? でも、わたしがわたしでなくなるくらいなら、そんなものいらない。わたしがわたしでなければ、目指す場所へ行く意味さえもなくなる。だから感じたものを忘れようとするけれど、それでも、手帳を捨てられない。

地下。必死で歩くリリィ。頭の中はぐちゃぐちゃです。旅の終わりである紫影の塔を見つめる。そこへ行くことだけが自分の目的で、それだけで良かったのに、知ってしまった。自分が地上を歩く誰かの影だということ、自分はその行動をなぞっているだけだということ、そこに自分の意志は関係ないということ、だけどその通りにするしか自分にはできない、それしか自分にはない。そして、紫影の塔へ行けば自分は消える。本当は縋りたい、Aに縋りたい。でも、できない。消えてしまうだけの自分を守ってAが傷付くくらいなら、Aなんていらない。ひとりで行ける、地上の誰かがそうすれば自分だってそうできるんだ、自分に意味なんてないんだ。そうやってAを拒絶してしまいます。Aは、それは違うって何か言いかけるけど、リリィは聞く耳を持ちません。そしてひとりになるリリィ。ひたすら前に進んで、現れたマオやルチアーノの言葉も振り切って。
この辺りのリリィは自分を見失って自棄になってもう見てられなかったです。Aを遠ざけて、マオたちの言葉にも耳を塞いで。途中で死んだとしても、消えてしまうなら同じだと。う~ん……本当に解ってない。いくらリリィが拒絶したからって、リリィが消えてしまうのをAが放っておくわけがないのに。

ひとり果てへと走るリリィ。意味なんてないのに、それでも足を止められない。Aと別れてからずっと、胸が痛くて苦しい。そこへルチアーノを倒したジャガーマンがやってきて、リリィを殺そうとする。いざその段になって、リリィは消えても良いと思っていたのにやっぱり嫌だと思っている自分に気付く。そして地下鉄が……そして誰かがリリィを狙う爪と牙をはね返した。
「すまない。リリィ。たとえ、きみの望みだとしても。……きみを死なせない」
Aでした。やっぱり来ると思ったよ。リリィはAが来たことに本気で驚いてますが。
「すまない。けれど、リリィ。僕はきみを守る。たとえ、影が砕けようとも。きみは死なない。きみは消えない。この、僕が、そうさせない」
爪と牙に抉られながらもAはリリィを庇い、スケアクロウを出そうとする。そしたら、いきなりジャガーマンが命乞いを始めたので唖然としました。今の今まで強気だったのに。でも、そんなの聞くAじゃないけど。で、スケアクロウにジャガーマンは砕かれたのでした。というかジャガーマンって結局何をしたかったの? ルチアーノとの会話で、「神を落胆させられるなら、それが我が悦びとなる」とかなんとか言ってたけど……イマイチ良く解らないキャラだったなぁ。
ジャガーマンを倒した後、Aは血を吐きながらその場に倒れてしまう。足元の影が一瞬砕けて……それがまたひとつになって、再生していく。でも、まだ完全には元に戻らない。Aの頭を膝に乗せて、後悔をかみしめるリリィ。
「命は必ず失われる。ならば、人の生には意味がないと、きみは、思うかい?」
「わかんないよ。A……。痛い、の……?」
「……いいや。問題、ないよ。僕は人間ではないから。再生、できる。こうして……」
「嘘……。嘘、言わないで……。こんなに……。死んじゃうよ、A……。こんなに、傷付いちゃって、さ」
「僕は死なない。心配ない。僕が、力尽きれば、かたちを失うだけ」
「消えちゃう……の……? あたしと、同じに……消えるの……?」
「……リリィ」
やっと、リリィはAの瞳を見ることができました。ずっと見られなかったAの瞳、もちろん、冷たい瞳なんかじゃなく、優しい瞳です。涙を流すリリィ。
「……リリィ。リリィ、幼ごころのきみ。リリィ・ザ・ストレンジャー。きみの行く道が僕の道だ。わかるかい。きみの世界が、僕の世界だ。そう、覚えておいて。本当に、旅をやめると願うのなら。それでも僕は構わない。けれど……。きみは既に決めているはずだよ。だからきみはここにいる。勇気あるひと。リリィ。我が、女王。きみが何と言おうとも。僕は、きみを、守り続ける」
どうあってもAはついてくる。やっとそれがリリィにも伝わりました。Aが好きで、Aを失いたくない。でも、こうしている今も、果てへ行かなければ、と思う気持ちは止められない。
「なら、それがきみの世界だ。リリィ」
「違うよ……。誰かの、影なだけ……」
「それは違う。リリィ。きみは、自分で選んだはずだ。その時から、きみは――きみはきみだよ。リリィ・ザ・ストレンジャー。そして僕も僕だ。僕は、選択したんだよ。きみと共にいることを、僕は、もう、とうの昔に選んだ」
「いつ……?」
「きみと出会った時に。こういうのを、確か、そう。人間たちは、一目惚れというんだったね」
「……莫迦。莫迦車掌。あたしたち……。消えちゃうんだよね。あたしたち、ふたりとも。あたしは、最果てへ着いたら。きみは傷付いたら……。なら、さ……。あたし、エゴなんとかだから、言っちゃう、よ……」
「ああ」
「あたし、は……。きみ、と……。ずっと……。消える時まで……。きみと、一緒が、いい。あたしは……。ひとめぼれとかじゃ……。ないかも、知れないけど。それでも、いい?」
「ああ」
「じゃあ……。A。背の高い、車掌さん。あたしと一緒にいて。消えるまで、ずっと、一緒にいて。一緒に、いてよ……。……A……。やっぱり……。ひとりは、嫌、だよ……」

やっぱり、Aは消えちゃうのか……。死なないけど、鉄にならないけど、消える。不安的中してしまった。この会話を交わしている間も、Aの体は欠けているんですよ。再生はしてるらしいけど。でも、やっとAの気持ちがリリィに届いたし、リリィの気持ちもはっきりしたし、これで二人一緒に進めます。

地上。エリシア。リリィの目にするもの、感じ取るものを目にしていた。それがエリシアの心を軋ませる。エリシアが忘れようとしていた感情を取り戻すたびに、リリィもそれを得ていく。そして、エリシアが苦しむようにリリィも苦しんで。忘れようとしても、意識を閉ざそうとしても、左目に流れ込んでくる。エリシアも、リリィが感じるままに涙を流していた。自我が軋んで、おかしくなる。リリィはわたし自身。私の心が生み出したものと直感する。でも、その心の奔流を受け止めきれない。ぐらりと意識が精神が揺れて倒れそうになる。その時、リリィの心の一つを感じた。暖かいもの、煌めくもの、尊いもの。リリィの感じているものに導かれて、エリシアは、最後にアランに会った時の別れ際のことを思う。「間章 また、逢う日まで」の時のことです。その、続き。アランに大好きだと告げて、離れていてもずっと好きでいますと告げて。そっとキスした時のこと。

地下。……突然ですが、以前、Aが「きみが望んだことだ」でどこまでやる気なのやら、と書きました。で、結論から言うと。
最後までやっちゃった。
さっきまで大怪我(?)して横たわってたのに、何かいきなりリリィを押し倒してるんですが……。あれ? さっきまでのしんみり切なくも温かいシーンはどこへ? あれ? 一緒にいたい、寄り添いたい、恋人たちみたいになりたいと……あたしが心から望んだの?とリリィが思っているうちに……。
A、やること早っ。せめて白手袋は外してくれ。というか、近くに地下鉄があるんだから中でやろうよ。なんてツッコミどころの多いHシーンなんだ(原因は全てA)。しかも、このかみ合わない会話は何だ。リリィは突然のことに混乱してるのに、Aときたら、「望むとおりにしよう。きみの、思うままに」「準備だよ」「問題ない」「大丈夫」って……問題だらけです。口調は優しいけど、そういう問題じゃないです全然大丈夫じゃないです。そして問題なくないのはここからが本番だった。Aの顔が近付いてきてリリィはキスするのかと思ってドキドキしていたのに、キスじゃなくていきなり突っ込むとか、すごい痛がってるのに「問題ない」って酷くないか。声と口調が優しくてもだめじゃん。その後も「動いた方がいいのかな。確か、そのはずだ」と動き出すし……リリィの状態はお構いなしですか? ……そして、なんとかリリィの心と体が追いついたと思ったら、Aは更に先へ突っ走っていた。余裕ないとか保たないとか言ってた割に、射精するまでのカウントダウンをする余裕はあるんですか……。「5、4、3、……」とか言い出した時はどうしようかと思ったよ。しかし、「こういう機能も、僕にはあるのか……」ってどうよ……。
……きっとあれです。一目惚れしてからずっと無表情の裏で色々我慢してたんです。リリィが望んでないから。でも、リリィがAを好きになって恋人みたいになりたいって思ったから、GOサイン出たとばかりに襲っちゃったんです。……あれ? 違う?
事後のリリィとAの会話は、お互いを想い合っているのが伝わってきて良かったな。たとえ自分が誰かの影でも消えるとしても、果てへ行くことを選んだのも決めたのも“あたし”で、そしてAと一緒にいたいと思ったのも“あたし”だよ、と、やっとリリィが前向きになった。Aのおかげですよね。……まぁ、「僕でいいのかい」って、やってから言うなよ、とは思ったけどね。

そんなリリィの勇気と決意を、エリシアは受け止めました。自我が揺らいだとしても、これまで触れてきたすべてのものを忘れないと。そして、リリィと同じように歩こうと。リリィがリリィとして果てへ行くなら、わたしはわたしとして果てへ行こう、と。
何となくだけど、リリィは大丈夫な気がしてきた。リリィはエリシアの影かもしれないけど、それぞれ地上と地下で自分の道を歩いてきたんだから。そうなると、心配なのはAですよね。力を使い果たすと消えるということは、スケアクロウが倒されリリィが黄金の力を使ったらもう……。
……ところで。エリシア、リリィとAのHシーンもすべて見てたんでしょうか。……見てたんだろうな。

紫影の塔の入口までの道を並んで歩くリリィとAです。恋人同士みたいに、他愛のない会話を交わしながら。ほのぼの二人らしい会話でほっこりしました。先を思うと不安だけどね。食事の必要のないAですが、好きな飲み物はあるんですね。炭酸水だって。Aは普通に言ってるのに何か言い方が面白いと思ってしまった。何でだろ。そして、聞かなくていいことを聞いちゃうのがAです。「歩き難くないかい。さっきのあれで」と。リリィが怒りながら平気だと言うと、「そうか。おかしいな……」って……おかしいなってあなた……。でも、この後の会話が微笑ましくて良かった。Aは自分のためだけに生まれて、自分のためだけに在るって言われた時の、リリィの照れつつも嬉しそうな顔が見られたしね。

とうとう紫影の塔に到着。紫影の塔の中へと二人寄り添って入っていく。目指す場所は頂上。
でも、そこには、7体目の……6体の御使いが融合した最後の御使いがいました。Aが何度も何度も「すまない」「ごめんよ」って言うのがたまらない。解っちゃうじゃないですか、もう最後だって、消えちゃうって……。
砕けるAのスケアクロウ、最後のクリッター。リリィは薔薇の魔女になって、スケアクロウの遺した鎌を手にして、Aの援護を受け、それを振るって御使いを倒す。A自身の武器は黄金色の銃です。銃構えてるAが格好良いです。でも……。「僕の役目はここまでだ。これで終わる」ってそんな……。「けれど、きみに言った通りに。僕は、永久に、きみの力となろう」と希望があるのかないのか解らないような言葉はかけてくれたけど……。
で、ここでチクタクマンが。「そして、魔女の黄金が消える。黄金の力が消える。ならば、終わりを始めよう」……って、ああ、鬱陶しい。
最後の御使いを倒した後、世界は消えていきます。地下世界に住む人々も、メモリーも、地下世界のすべてが、虚無へと戻っていく。残ったのは、トレヴァー・タワーの頂上と、それに続く螺旋階段と、リリィと、今にも消えそうなAだけ。地下世界で唯一の実体である現象数式体がすべて消えたから、地下世界の理が消えたから、地下世界を構成するものもすべて消えてしまったんですね。う~ん、確かにそれは道理だけど、消えるのは自分だと思っていたリリィは、今まで自分がしてきたことを思って愕然。自分が地下世界を、みんなを消してしまったと。そんなリリィを胸に抱きしめて、Aは優しく真摯に告げます。少しずつ消えて行きながら。これでいいんだと。
「意味はある。きみは、彼らと会った。だから、いいんだ。これで、いいんだよ。誰もきみを恨んだりしない。きみを、待っていたんだから。きみは彼らと出会った。それには、きっと意味がある。箱庭たる地下世界よりも、ずっと、意味と価値があるはずだ」
「すまない。あまり、時間がない。今のきみにはすべて話せる。でも、時間がないから。だから、僕は僕のことを言おう。僕の時間の最後に」
「実のところ、僕という存在は。アラン・エイクリィが抗い、足掻き、神なるものの力の一部を奪い、遺した地下世界への傷に過ぎないが。きみがたとえば自ら“きみ”を選んだように。僕は“僕”でありたいと、そう、思う。だから……。僕はこう言おう。きみが好きだ。リリィ。初めて出会った時から。一目惚れだよ。僕は、人間ではないのに。きみを、好きになってしまった」
「愛しいリリィ。幼ごころのきみ。永久に。きみの世界に、僕はいる。心配いらない。さあ、行こう。きみが“きみ”であり続けるために」
――地下世界は消えた? すべてが無駄だった? いいや。違うとも。リリィ、世界は――

それがAの最後の言葉。最後にリリィにキスして告白して消えるとか、めちゃくちゃずるいです。
Aが好きで、消えて欲しくなくて、でも、そんな風に言われたら、リリィは行くしかないじゃないですか。

エリシアはトレヴァー・タワーの階段をひとり上っていく。リリィとAを想いながら、アランを想いながら。今まで拾い上げてきたみんなの想いを抱きながら。
そしてリリィも階段を上っていく。Aと約束したから。今まで地下世界で出会った人たちを想いながら。行く手を遮るすべてを振り払って。
エリシアが頂上を目指すのは、そこが、届かなかった試作型の電信通信機の発信記録の発信元だったから。アランからエリシアへと遺された言葉がそこにあるから。アランが最後の瞬間にいた場所だから。
そして……頂上。エジソン卿=チクタクマン=黒い神と、二人は対峙する。

黒い神は、この世界は、すべては戯れだと嗤う。この世界は、5年前に死んだ人々のメモリー(記憶)を切り取り、かたちにしただけの箱庭でリリィたちは遊具に過ぎないと。死のない世界を再現し、死をかたちとして7つの現象数式体を配置したが、もう飽きたから消してしまおうとしている。ただ消すだけではつまらないから、リリィに消させたのだと。愛など、すべては無価値、無意味、無形、存在さえもない、きみと同じだと。「死んだものに意味はないと思うかい?」と言ったAを思い出してリリィは神をにらみつける。しかし、神はなお嘲笑う。ここにはなにもない、アランの言う「愛」など否定し得たが、消し去るだけではつまらない、だからきみたちが来てくれたおかげで十分楽しめた、この世界を作った甲斐もあった、もう帰るが良い、ここが旅の終わりだ……と。
リリィは、そのまま落ちて行く。消えて行く。消えるなら最後に、みんなが持っていた詩を自分も作ろう。自分のこれまでを詩に。そして、最後は消えておしまい。でも、それでいいの? みんなを嗤う黒い神は許せない。だから何か一つくらい、言い残しても良いよね?
そうして編み上がった詩篇は、たとえ存在しないものだとしても、かりそめだとしても、意味を成す。アランが遺した現象数式……「A」という式が、リリィの詩篇を式へと変えます。編まれた詩篇は数式となって、同じく編まれた地下世界へと届く、落ちてきた場所へ戻ることもできる、とアランの声が語ります。
リリィは、無意識に現象数式を編みながら、頂上へと戻りました。そして、消えてゆくものに、あらゆるものに意味などないと嘲笑する神に、言葉をぶつける。みんなここで生きていた、それを意味がないとは言わせないと。Aは言っていた。失われるものに意味はないと思うかい、と。消える前にその答えを、エリシアと一緒に、神にぶつける。神に嗤われる世界など、神に嗤われる過去など、どこにもない。あるのは、リリィが見たリリィの世界、エリシアの見たエリシアの世界。Aが言っていたこと。リリィの世界はリリィの記憶はリリィだけのものだ。みんなと会った、それがリリィの世界なのだと。
それでもまだ、嗤うのをやめない神に、リリィは銃を突きつける。黄金色の銃。Aの銃。それでもまだ、今はその屁理屈を通すのも面白い、意味はないがね、とか嘯いています。
「今? きっと、何度やっても同じだよ。意地悪な神さま。あたしじゃない誰かが、きっとあたしと同じに、ここで、きっと、みんなを見つける。あたしが出会えなかった、沢山の、他のひとのことだって。きっと――」
「誰か、だと? 人間ひとりなどに何ができる。脆く、儚く、すぐに死ぬ生物どもに」
「ひとり……?」
「ああ。その通り。人間など、すべて、ひとりだとも。感情などに意味はない。だからこそ、きみたちはひとりだ。たとえば、そう。リリィ。こうしている今も。きみはひとりだ。ただ、ひとりきりでそうしている」
「そう――。あたしが、ひとりに見えるなら。きみは違う。神さまじゃない。白きものが、天使なんかじゃないように。そして、きっとここも、あんたの言う通りの世界じゃない。意味だって、あるんだ。……絶対に」
そして、リリィは、みんなの、Aの、想いを込めて、神に向けて引鉄を引く。

リリィはエリシアの感情の影、そしてAはアランの経験の影+エジソン卿の力の一部+リリィ……で作られた存在。だから、エジソン卿に似ていたということかな? Aは大事なこと、ずっと最初から言ってたんですよね。「きみのかたちはきみが決める」「きみの世界はきみが作る。きみだけのものだ」「きみの選ぶものがきみの世界だ」って。まぁ、その時には意味が解らなかったんだけど……。Aのリリィに対する想いが、深くて一途で全く揺らがなくて、そんなAがますます好きになりました。
それにしても、何度も言ってる気がするけど、エジソン卿=チクタクマンには本当に腹が立つ。意味はない、ってそればっかり。いい加減にしろって何度思ったことか。だから、リリィがバッサリ斬って(撃って)くれてちょっとすっきりしました。でも、リリィも言っていたように、エジソン卿がいなければ、みんなに会えなかったんだよね。というか、そもそも、リリィもAも存在しなかったわけで……。そう思うと、ものすごく複雑です。

エリシアの目の前でエジソン卿は消えた。同時に、黄金瞳の左目は、リリィを感知しなくなる。そこへ、アランの声が……。
ここがとても好きです。会話してるわけじゃないのに、アランがそこにいるように、会話してるんです。
『ここに誰かが訪れた時に。当音声は、自動的に再生する。……録音、できているかな。よし。できている』
「……はい。聞こえます」
『12月25日。現在時刻、午前01時02分。アラン・エイクリィが録音する。仕掛けを幾つか施した。あまりに、ささやかなものだけど。彼が気付かないことを願う。仕掛けは、幾つかあって……。そのうちのひとつが、これだ』
「だから……。聞こえるんですね」
『これを聞くのが、きっと、きみであるように願う』
「大丈夫。わたしです、アラン」
『……急ごう』
「はい」
『時間がないから、手短に。本当は、もっと話したいことがある。でも、今は一言だけ。エリシア』
「……はい」
『僕は、きみを愛している』
「はい……。ええ、聞こえる……」
『愛しているよ』
「うん……。わたしも……。……わたしも。アラン。愛してる。ずっと、愛してる。ずっと、ずっと、大好き。大好き――」
エリシアはこの言葉を届けるために、ここへ来た。
そして、アランが約束した青空が……失われた陽の光が射した。

泣きました。エリシアの涙を流しながら笑う顔がすごく綺麗でした。アランってすごい。エリシアとの約束をちゃんと果たしました。全然ささやかな仕掛けじゃないよ。もちろん、アランの力だけじゃなくて、エリシアやリリィやAや地上に生きた人々や地下世界にいた人々の想いとかが全部重なって、その仕掛けが大きなかたちになったんだろうけど、それでも、その根源を作ったのはアランだよね。あと、Aとアラン、同じこと言ってましたね。時間がないっていうのも、最後に告白するところも。本当に、同じ。余計に泣けてくる……。

神を失って、地下世界は消えていく。紫影の塔も、紫の空も、何もかも。リリィは虚空へ落ちて行く。虚無の空へ右手を伸ばすけれど、その右手ももう見えない。消えて行こうとする自分、もう眠ろうとリリィは目を閉じて。
「リリィ」
Aの声がして目を開けると、自分へ延ばされる数多の手があった。ミリア。王様。カトリーン。ルース。ジンジャー。ジルーシャ。ルチアーノ。マオ。
「消えない。あたしたちみんな、ひとりが憶えてくれるなら、誰かが憶えてくれるなら、誰も消えたりなんかしない」
……そして、伸ばした右手が強く引っ張られる。
「誰も、消えはしないよ。きみが、憶えている限り。そして、きみもまた。誰かが憶えている限り。さあ。行こう、我が女王」
みんなが来ました。そのみんなの手は影みたいなんだけど、Aの手は、白手袋をした手は、しっかりとリリィの手を掴んでます。良かった。本当に良かった。

1907年12月26日、廃墟都市を後にするエリシア。手帳には、今までのエリシアとリリィの旅を世界をすべて記録してあります。エリシアの左目はもうリリィを感じ取れない。“あたたはわたしの影だというけれど、わたしはあなたに導かれもした。だからあなたはわたしの影じゃないと伝えたい。” そうして、エリシアが廃墟の都市を振り返った時、列車の音が、そして視界には……一輌だけの地下鉄が地下から飛び出し空へと走りぬけて行くさまが、可愛い女の子が、背の高い青年と寄り添っているのが、映った。
「……忘れないよ。わたしが見たもの。わたしが触れたもの。わたしの旅も……。あなたの旅も、ぜんぶ忘れない。……ね。リリィ」
ふたりを載せた列車が、雲の果てを、空の果てを、紫色の果てを、超えて行くのを。廃墟を越えて――。わたしを越えて――。青空へ――。駆けて行く、姿を――。

エンディング。何回聴いても良い曲です。もう何度も何度も聴いてます。でも、こうして、この話の流れで聴く方が、もっと良いですね。今までの出来事を順番に映し出すムービーも。歌の歌詞も。最後のひとことが、エピローグへと繋がっていく。

そしてエピローグ。
空を駆けて行く一輌だけの列車に乗って旅をするリリィとA。
これから、ずっとずっと、続いて行くんでしょう。
誰かが憶えている限り。誰かを憶えている限り。
終わることなく。
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