空と風のうたブログ
読書記録(BL&非BL)、ゲームの感想など。
この手の先に…
2005年05月03日 (火) 22:13 | Edit
[書籍概要]
タイトル:この手の先に…
著者:火崎勇
イラスト:円陣闇丸
出版社:桜桃書房(エクリプスロマンス)
発売日:2000/10/10
収録タイトル:「この手の先に…」 「ただ一つの手だから」

[あらすじ]
過去のトラウマから日々のちょっとした変化も恐れる佐倉は、毎朝エレベーターの中で出会う男に興味を抱きつつも、声を掛けることが出来なかった。しかしあるアクシデントからその男と縁が出来、会話を交わすようになる。そんなある日、後輩から告白されているところをその男に目撃され、男からも強引に口説かれる。拒絶の意を示す佐倉だったが、男の名前がトラウマの原因となった初恋の少年の名前と同じであることを知り……!?

[感想]
主人公の佐倉は、ほんの少しの流れの変わりにも敏感に恐怖を感じてしまう。それは過去の出来事が原因となっており、一度手に入れた幸せな時間が、ずっと続くものと信じていたその幸せが、簡単に零れ落ちてしまうことを身を以て思い知らされ、今なお深い傷となって残ってしまっています。そのため、日々の些細な変化も望まない、当たり障りのない穏やかな生活を送っていれば傷つくこともない――と、自分を戒めて過ごしています。そんな佐倉に変化が起こり始めたのは、毎朝エレベーターで会うようになったある男の存在から。最初は挨拶とエレベーターのボタンを押す男の手に心地良さを感じていただけだったのに、段々、もっと親しくなりたいと心の何処かで願っていることに気付く。でもそれは、佐倉にとっては願ってはいけないことで、願って後で傷つくことになるのが怖いわけです。ふとしたきっかけで男と会話を交わすようになってもその思いは変わらず、何らかの変化が生まれるたび、それを戒める佐倉が痛々しくて仕方がなかったです。何もそこまで……と思うほど、後ろ向きなので。
この後、佐倉に劇的な変化が訪れます。後輩の宇都宮が佐倉に告白してきて、それをその男に見られてしまい……そしてその男からも強引に迫られてしまう。その上、男の名前がトラウマの原因となった初恋の少年と同じであることが解り、なおかつ男こそその少年本人なのだと、男自身の口から聞かされます。かつて自分を好きだと言い、来年からは恋人だと言い――なのに佐倉の前から姿を消してしまった少年なのだと。別れの言葉すらなく捨てられたとずっと思ってきた佐倉の傷ですが、誤解だったことが解り、男――明比との恋愛に踏み出そうとします。でも、これで上手くいくかというと、そうではなかったんですね。何となく違和感のようなものが感じられて。佐倉自身も、何か影を感じ、それがどんどん深まっていくような出来事もあって……。もうひとつ感じたのは、明比の強引な性格が、明比が佐倉の初恋の少年だったと解った時から、どうも中途半端に見えてもやもやしてしまったということです。だからきっとまだ何か秘密があるんだろうなという気がしました。それでも、佐倉への想い自体は真実だということは伝わってきました。実際、強引さが薄れてしまったことの理由も納得できるものでしたし。そこにあった明比の佐倉への思いや優しさ、葛藤もね。本当の明比はやはり強引で、そういうところが私は好きだったりします。明比は宇都宮のことを子供扱いしてますが、実はそう言う明比自身、子供のようなところもある人で、強引さの中に見え隠れする子供の部分も気に入っています。
まだ明比が秘密を抱えている時の佐倉の様子については、明比を信じようとする心と、信じることが怖い心がせめぎ合う佐倉の心情が苦しいほど感じられました。だから、明比の真実を受け止め、今度こそ過去ではなく今これからを明比と手を繋いで行こうと決意する佐倉の言葉にはぐっとくるものがありました。急には無理かもしれない。でも少しずつ確実に強くなっていく佐倉は、これまでが辛かった分、一層輝いて見えて、安心できました。
続編の「ただ一つの手だから」では、少し前から様子のおかしい明比に、佐倉がマイナス思考になってしまい、少しハラハラしました(今、安心したところだったのに……) 明比の様子がおかしい理由が想像できるだけにもどかしくもありました。でも今回は、佐倉の方から行動を起こしたのが良かったなあと思いました。宇都宮のアドバイスからだったのですが、最初の頃の佐倉だったら、同じアドバイスをされても恐らく自分から動くことはなかっただろうと思うので、それを考えると、前向きに見詰められるようになったのだなあと嬉しくなりました。表題作のラストで、佐倉は明比を下の名前で呼んでいたのに、続編では「明比」と呼ぶのが何故かなあと思っていたのですが、それにも佐倉なりの理由があって……佐倉の心の変化が顕れているようで良かったです。
後、宇都宮ですが――彼は素直で朗らかで本当に良い人なんですよね。佐倉にとって、明比とは違う意味ではあるけれど、支え的な存在だったと思います。幸せになって欲しい。

個人的評価:★★★★★

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コメント
このエントリーへのコメント
こんばんは
お久しぶりです!
今回私が読んだのはf-ラピス文庫から再販された方なんですが、同じ本と言う事でTBさせていただきました。

あんなにも臆病だった佐倉が変っていく瞬間がすごく好きです。
もう少し早く判ってればあんなふうに悩まなくてもすんだのにね、とも思うのですがあの後の展開を考えると必要な葛藤だったのかもしれませんね

宇都宮くんにも本当に幸せになって欲しいです。
では!
2006/05/08(月) 22:19:40 | URL | Juea #l/VZmCVM[Edit]
>Juraさん
こんばんは。
レスがとんでもなく遅くなって、本当に申し訳ありません。
トラックバックもありがとうございます!

f-LAPIS版、買おうかどうか迷ったんですけど、エクリプス版を購入して読んでから大して間もあかずに発売されたので、佐々先生のイラストに惹かれつつも、結局買いませんでした。
新たに書き下ろしの短編とかがあれば絶対買ってたでしょうけど(笑)

佐倉が変わっていくの、良いですよね~。
佐倉と明比のようなカップルは好きですね。
同時に宇都宮が少し可哀想で…幸せになってくれることを祈ってます。

ではでは、コメントありがとうございました。
2006/07/13(木) 19:49:47 | URL | 立花真幸 #gqzGzX3.[Edit]
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